「従業員を大切にしてくれる相手へ譲りたい」という希望は、会社売却の大切な判断軸です。ここでは従業員自身を後継者にする承継ではなく、第三者へのM&Aで従業員の雇用を引き継ぐ場合を扱います。抽象的な約束だけに頼らず、現在の条件と承継後に守りたい点を具体化しましょう。
実際の働き方を把握する
まず、給与台帳や雇用契約書だけでなく、日々の運用を確認します。職種、勤務地、勤務時間、手当、賞与、退職金、休暇、役職などを整理すると、買い手の制度との違いが見えてきます。長年の慣行や口頭の取り決めも、従業員にとっては大切な条件かもしれません。書面と実態が異なる点は、売却前に専門家へ相談する材料として分けておきます。
「雇用維持」の中身をすり合わせる
同じ雇用維持という言葉でも、給与や勤務地まで含むのか、一定期間の継続を意味するのかは相手によって異なります。候補先との面談では、何をどの期間維持したいのかを伝え、将来の変更をどのように協議するかまで確認します。
- 継続を希望する雇用区分・勤務地・主要な処遇
- 役職や担当業務が変わる場合の説明と支援
- 資格者や現場責任者の定着に必要な条件
- 引継ぎ後に従業員が相談できる担当者
説明の準備を先に進める
従業員への説明時期は、交渉状況や手法、業務への影響を踏まえて個別に決めます。全員へ同時に伝えることが適切とは限りませんが、一部の人に伝える場合も守秘と説明の一貫性が必要です。「何が決まっていて、何が未定か」「給与支払いや日常業務はどうなるか」を整理し、経営者と買い手の説明が食い違わないよう準備しましょう。
譲渡方法に応じた確認を行う
株式譲渡と事業譲渡では、雇用関係の扱いや必要な手続きが異なります。従業員の意向や個別契約を無視して、一律に承継できると判断することはできません。弁護士や社会保険労務士などに確認し、契約に反映する事項と現場で実行する事項を分けて管理します。成約後も説明の窓口を残し、不安や行き違いを早めに把握することが重要です。
売却を決める前から、会社のこれからをご相談ください。

